日本人は、男女差はあるものの冷えを自覚している方が多く、5割以上の方が、「今までに冷えを自覚したことがある」もしくは「今も自覚している状態にある」という調査結果があります。
一概に《冷え性》という言葉をよく耳にしますが、実は冷えには複数のタイプがあり、その中でも足の指の構造の乱れ、ゆがみが原因である、と言われているのが《足の冷え》です。
《冷え》についてお話をする際は、熱というキーワードが必要不可欠です。身体の中で作られた熱は、血液によって必要なところに振り分ける仕組みになっています。心臓から送り出された血液は、一番遠くにある足の先で折り返して心臓に戻ってくるというシンプルな循環を行っています。血液の流れが悪くいと、足の先に近づけば近づくほど熱が運ばれにくくなってしまいます。
身体に熱を届ける方法としては、外部から間接的に温める方法を除くと、先述している血液によって届ける、もしくは熱を届けたい部位の近くの筋肉を収縮させることで熱を産生するほかありません。
「冷え」は、熱を届ける力と、身体を冷やす要因のバランスに影響を受けます。
今回は、恐らく皆さんも一度は聞いたことがある「外反母趾」と呼ばれる足の指の構造の乱れが、このバランスにどのような影響を与えるのかをご説明します。
ではまずは、自分の足をみて、外反母趾の状態をチェックしてみましょう。
右足と左足が同じような形の方もいらっしゃいますが、細かくチェックしていくと左右対称ではありません。気になる側の足だけをチェックするのも良いですが、外反母趾予備軍という可能性もありますので、左右共にチェックしてみましょう。
自身の足の幅をみてみましょう。親指と小指の指先の幅と、親指と小指のつけ根の幅を比較した際に、つけ根の幅の方が広くなってしまっている方はいませんか?この場合、親指と小指のつけ根の幅を締める靭帯が緩むことで、外反母趾になってしまいます。ひどくなると親指は人差し指に、小指は薬指に近づいていきます。指先の幅と、つけ根の幅に大きな差がなければ問題ありませんが、本来足の形は指先の幅が広いのです。子どもの足、特に赤ちゃんの足は、構造に乱れがない理想的な形をしていると言えるでしょう。
このタイプは、親指そのものの骨はほとんど曲がっておらず、つけ根の骨だけが異常に出っ張っていることで、曲がっているように見えていることが特徴です。原因として、歩行時に指上げ歩きをして母趾のつけ根(母趾球部)を強く打ちつけるため、この部分に過剰な圧がかかることによって防御反応で仮骨形成が起こり出っ張ってきます。日常生活の中で足の指をうまく使えていない人に多く、後天的になってしまう外反母趾のパターンといえます。比較的単独で起こることは珍しく将来的に複合することも多いので経過観察及び早期の施術をおすすめします。
足の親指は比較的なりにくいですが、他の指の関節が屈曲してしまい、意図的に伸ばそうと意識をしても、自由に動かしにくい状態になります。関節を筋肉は使わない状態が続くと筋力が下がりボリュームもダウンして繊維化してしまいます。カカト重心の方が増えたり、靴の種類などの様々な原因で、足の指先にしっかりと体重をかけたり、指先を使わずに歩行したりすることで指先が曲がり変形をきたします。この状態が続くことで歩行の蹴りだしが指のつけ根になり、靭帯が緩んでしまうこともあります。
足の構造の乱れである外反母趾の状態は、いずれかの構造の変化から始まり、複合していくこともあります。その変化の段階で痛みを早く感じれば「プロに見てもらわないと」という意識も出やすいですが、なかなか痛みを感じないこともあり、対処が遅くなることも多いです。痛みはもちろんですが、足の構造が乱れると身体にとってマイナスの影響があります。その中の一つが今回のテーマが【冷え】なのです。
外反母趾になると、足の指を自由に動かしにくくなる、足の指をしっかり使って立ったり、歩いたりしにくくなります。そして、その流れで下肢の筋肉をうまく使えなくなる、または姿勢全体のゆがみに繋がることもあります。足の指の自由が低下することで筋肉の収縮ができなくなる、または弱くなる可能性もあるのです。
心臓から送られた血液の往路は、重力によって上から下へと運ばれやすい状態ですが、下から上への復路に関しては、手助けが必要です。その手助けをしてくれるのが筋肉の収縮による筋ポンプ作用です。血管のまわりにある筋肉が収縮することによって血管を刺激して、下から上へと血液を押し返す役割をしてくれています。この筋ポンプ作用の力が低下するとどうなるかは、なんとなく想像できますか?そうなのです、血液の流れが悪くなってしまいます。
血液の流れが悪くなると、熱を運ぶ力が弱くなってしまいます。それだけではなく筋肉の収縮による熱産生もうまくできないようになり、結果冷えやすい身体に繋がってしまうのです。もちろん足が冷える理由はこれだけではありませんが、この状態も大きな一因と言えます。痛みがある状態では炎症があり冷えは感じにくいかもしれませんが、状態が落ち着いてきたときに炎症も治まり、今年の冬から、夏の冷房で【冷え】を感じるようになったという方も少なくはありません。
痛みが無くても気になったら一度専門家に見てもらうことをおすすめします。
特に、親指が20度以上曲がってしまっている、仮骨が形成されているところが痛い、指が曲がって動かない などの状態が確認できたら相談してみてください。悪い状態が続くと、指先の感覚が薄れてくることもあります。誰かの協力は必要ですが、仰向けで寝転び、目をつむり自分の足の指をボールペンなどの細いもので親指と小指以外をタッチしてもらいましょう。もしどの指にタッチしてもらったかが分からないのであれば早期に対処することをおすすめします。
①カカトとつま先をそろえて立ちます。
②足の指で床をつかむようにして前進します。
目標は1.5m!
床に座って行いましょう。無理のないようにゆっくりと力をかけてください。
足の指を曲げたり反らせたりする動き(①~④)は、左右どちらも5秒×5回ずつ行いましょう。
①左足の親指のつま先を持ち、手前に引き寄せます。
②親指以外の指も持ち、手前に引き寄せます。
③左足を右太ももに置き、左足の親指以外の指を持って、②とは反対側に反らせます。
④③と同様に、親指も反らせます。
⑤足の指と指の間に手の指を差し込み、内回し・外回しを10回ずつ行いましょう。